相続税を安くできる「生前贈与」とは?節税のために知っておきたいメリットとデメリット

「生前贈与」すれば支払う相続税を減らせるって聞くわ。それならなるべくたくさん生前贈与しておいたほうが得するわね。

近年大幅な改正があり耳にする機会も多くなった「生前贈与」などの相続税対策。

誰もがいずれ直面しますが、突然当事者になるパターン多いのではないでしょうか。

確かになかなか事前準備するのっと難しいよね。

しかし前もって正しい知識を身につけて実行しないと贈与税額が相続税額よりも高くなってしまう可能性があるのが「生前贈与」です。

この記事では、難しい相続税の基礎知識と「生前贈与」の種類について紹介します。

この記事を紹介している私は、ファイナンシャルプランナー2級(資産設計提案業務)の資格を所持しています。※ただし更に専門的な話が知りたい場合は司法書士に相談することをおすすめします。

この記事を読むとわかること
  • 相続税についての基礎知識
  • 「生前贈与」について
  • 相続税を安くする方法
この記事を書いた人 【いち】
  • 40代メディア勤務
  • FP2級/年金アドバイザー所持の勉強好き
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目次

遺産相続とは?

遺産相続とは?

「相続」とは亡くなった人の遺産を親族等が継承することで、相続税はその引き継がれる財産等に課税される税金で継承する人に支払い義務があります。

遺産を渡す人(亡くなった人)を「被相続人」、遺産を継承する人を「相続人」と呼びます。

原則、相続は法定相続人の範囲で行われますが、被相続人が生前に遺言等で相続人を指定することも可能です。

▶︎お金の超基本

相続税について

被相続人(亡くなった方)の遺産を相続で受け継いだり、遺言によって遺産を受け継いだ場合に、遺産総額が一定以上だと金額に応じた税率を乗じた相続税が徴収されます。

「一定以上」とは、以下を超える金額(基礎控除額)のことを言います。

相続税の基礎控除額
  • 3,000万 + 法定相続人の数 ×  600万円

相続税は「基礎控除額」というものが存在し、それを超える部分のみが相続税の課税対象となります。

つまり遺産の総額がこの範囲内なら相続税がかからないということ。

実際に具体例を示します。

基礎控除の具体例

実際に遺産総額が3000万円の場合と5000万円の場合のシュミレーションをしてみましょう。

まずは遺産相続が3,000万円の場合。

遺産総額3,000万円、法定相続人が妻・子供2人の場合
  • 3,000万+3人×600万=4,800万円

 → 基礎控除額>遺産総額のため相続税なし

基本の控除額が3,000万円と法定相続人の人数に合わせて加算された額が基礎控除額となるので相続税がかからず申告も必要なしです。

対して遺産相続が5,000万円の場合。

② 遺産総額5,000万円、法定相続人が妻と子供2人の場合
  • 3,000万+3人×600万=4,800万円

→ 基礎控除額<遺産総額のため差額200万が課税対象

遺産総額が基礎控除額を上回るため差額の200万円が課税対象額となり、200万円に一定税率をかけた金額を相続税として支払う必要があります。

基礎控除の限度額をしっかり把握しておこう。

「控除」については、「思ったより少ない?住宅ローン控除の還付金が試算より少ない理由をFPが解説」でも解説しています。

相続税対策としての「生前贈与」

相続税対策としての「生前贈与」

基礎控除を超える部分は課税対象になるので、課税対象を少なく(節税)する一つの方法が「生前贈与」です。

この生前贈与にもいくつか種類があり、主に以下のようなものです。

  • 暦年贈与による年間110万円までの基礎控除を利用
  • 相続時精算課税制度を利用
  • その他の非課税特例を利用

これらの相続税対策について順番に解説します。

暦年贈与による年間110万円の控除枠

「暦年贈与」は暦年(1月1日〜12月31日)ごとに行う贈与のことで、1人当たり年間110万円までの基礎控除があります。

これは「相続人一人当たり」110万円という意味なので、例えば夫が奥さんとお子さん一人に相続する場合は年間で110万×2=220万円まで非課税で贈与が可能です。

具体的に確認します。

暦年贈与による年間110万円控除の具体例

下記は遺産総額2億円、法定相続人が妻と子供1人と仮定し、生前贈与を利用しない場合と利用した場合です。

生前贈与なしで相続発生
  • 課税対象額:2億円 −(3,000万円+2人×600万円)= 1億5,800万円

 → 相続税額:1億5800万円×税率40% − 控除額1700万 =4,620万円

10年間生前贈与した後、相続発生
  • 生前贈与額:110万円×2人×10年間 = 2,200万円
  • 課税対象額:2億 − 2,200万円 −(3,000万円+2人×600万円)= 1億,3600万円

 → 相続税額:1億3600万円×税率40% − 控除額1700万 =3,740万円

生前贈与ありなしで相続税額に880万円もの差が出でているね。

暦年贈与は、相続税の基礎控除を考えても更に財産が残るような場合に一般的に多く取られる相続税の節税手法になりますが、注意点もあります。

暦年贈与についての注意点
  • 贈与時に現金を手渡ししたり子供名義の口座に親の預金を入れるような、いわゆる「名義預金」と見なされる場合、税務調査で拒否される場合あり。
  • 110万円以下の贈与であっても、「定期贈与」とみなされると贈与税が課せられる。

つまり毎年110万円以下の贈与を行なっていた場合でも、計画的な「定期贈与」ではなく、あくまで「連続贈与」であって毎年贈与契約を結ぶ形であれば課税はされないということです。

暦年贈与によるメリットデメリット

暦年贈与によるメリット
  • 生前贈与を行うことで相続時の財産を減らすことが可能
  • 誰にでも贈与が可能
暦年贈与によるデメリット
  • 贈与契約書を用意していないと認められない場合も
  • 「定期贈与」と見なされると贈与税がかかる場合がある

金額が少額だからスルーしがちだけど、暦年贈与の場合は贈与契約書を用意しよう。

ただし贈与から3年以内に相続が開始(亡くなった)された場合、相続開始から遡って3年以内の贈与については相続税が課せられます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、60歳以上の贈与者(親または祖父母)から20歳以上の受贈者(子または孫)に対する生前贈与額の合計が累計で2,500万円以内であれば贈与税が非課税になる制度です。

しかしこの相続時精算課税制度は基本的には利用しないほうが良いです。

あれ?利用しないほうが良いってどういうこと?

実は相続時精算課税制度には落とし穴があるんだよ。

その理由を具体例から見て見ましょう。

相続時精算課税制度の具体例

総資産が1億円ある場合
  • 2500万円を相続時精算課税制度で贈与する(非課税)

 → 実際に相続が発生した場合は7500万円+生前贈与2500万円に対して課税

 →相続時精算課税制度を一度利用したら、以後は一切の生前贈与不可

これを見てわかる通り、相続時精算課税制度は贈与税をゼロにする代わりに相続税に置き換えて支払い時期を繰り延べているだけにすぎません。

しかもこの制度を使用すると、以後、一切110万円までの非課税制度が利用不可になります。

これじゃあ全く節税になってないわ。

贈与時には税金かからないけど、結局相続時にかかるし、さらには年間110万円迄の非課税贈与も対象外になるからね。以後は110万円未満の贈与でも相続時に課税対象として足されてしまうよ。

じゃあこの制度ってなんであるの?

一見必要ない制度のように思いますが、実は2つのパターンだけは相続時精算課税制度を使うと得をします。

相続時精算課税制度を使うと得するケース

得するケースは以下の二つです。

  • そもそも相続財産が基礎控除額を超えない場合
  • 将来的に値上がりが確実である財産を所有する場合

相続を受けるであろう財産がそもそも基礎控除以下である場合、相続税は発生しないので、相続時精算課税制度を利用することで事前にキャッシュを受け取れるというメリットがあります。

また不動産など将来的に値上がりが確実な財産の場合、相続時精算課税制度を利用しておけば、将来相続が発生した時に足し戻す金額は仮に不動産価値が上がっていたとしても贈与をした時の金額になるので節税対策になります。

なるほど!つまりケースバイケースということね。

上の2つのケースの時のみ利用対象になると考えておけばOK!

相続時精算課税制度はわかりにくい制度なので、詳しく知りたい人はファイナンシャルプランナーの無料相談を活用してみるのも良いですよ。

相続時精算課税制度のメリットデメリット

以上をふまえ、相続時精算課税制度のメリットデメリットを以下にまとめました。

暦年贈与によるメリット
  • 2,500万円までの移転が一気に可能
  • 土地などの分割不可な財産も生前に贈与可能
  • 累計贈与が2,500万円を超えても税率20%
  • 時価の値上がりが予想される財産は、値上がり分の節税可能
暦年贈与によるデメリット
  • 対象者に年齢制限がある
  • 相続時精算課税制度を一度利用すると以後の贈与に110万円の基礎控除は不可
  • 年間110万円以下でも申告が必要
  • 小規模宅地等の特例は適用不可

メリットとデメリットをしっかり理解しておこう。

贈与税のかからない非課税特例

次に、暦年課税の基礎控除枠や相続時精算課税制度の他にも贈与税を非課税にできる特例を見ていきましょう。

住宅資金贈与の特例

父母や祖父母など直系尊属からの居住用住宅を購入するために受けた贈与で、自身が住む住宅用の家屋を新築・増改築のためのものは、最大3,000万円まで非課税になります。

平成31年4月1日~令和2年3月31日までの締結で、消費税10%の省エネ住宅は3,000万円非課税です。

教育資金贈与の特例

祖父母などの直系尊属から30歳未満の受贈者が教育資金の一括贈与を受けた場合、1,500万円までであれば贈与税が非課税となります(学校以外の塾や予備校などへの支払いについては500万円が上限)。

教育資金贈与を行う時は30歳までに使い切る必要があり、金融機関で専用の口座を開設し教育資金として使った領収書は金融機関に提出が必要です。

30歳までに使い切れなかった場合は残った金額に贈与税が課せられるので要注意。

結婚子育て資金贈与の特例

20歳~49歳の子供や孫が、結婚資金や子育て資金などに活用できるお金の贈与を受けた場合、最大1,000万円までは非課税になります(令和3年3月31日まで)。

  • 結婚資金の贈与:300万円迄
  • 結婚資金+出産・子育て資金の贈与:1,000万円迄

夫婦間贈与の特例

夫婦間で居住用の不動産を贈与、又は居住用の不動産を取得するための金銭贈与の場合、基礎控除110万円に加最大2,000万円が非課税になります。

ただし婚姻期間が20年を超えている必要があります。

まとめ:「生前贈与」は両親が元気なうちに相談を

まとめ:「生前贈与」は両親が元気なうちに相談を

相続は突然発生し、その時期を選べるものではありません。

いざ相続という時に親族間で折り合いがつかないパターンも良くあるので、両親が元気なうちに相続についての意思確認をしておくのも大切です。

生前贈与という選択によって相続を円滑かつ効率的に進めることができるので、より詳しく知りたい方はファイナンシャルプランナーの無料保険相談を活用してみるのもオススメです。

様々なお金についての基礎知識についてもっと知りたい方はコチラ👇

▶︎お金の超基本

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